内川ダムに近い金沢市の山間部、新保町で今冬、木質エネルギーをペレットボイラーとするペレットストーブの燃焼時に排出される熱を再利用し、住宅前を融雪する試みが始まった。将来は屋根の融雪や室内の床暖房にも応用する計画。雪深い過疎地で高齢世帯にとって負担の大きい冬場の難題解消が期待される。(押川恵理子)
融雪装置を昨年末に設置したのは山村巌さん(67)、実代子さん(65)夫妻。玄関から道路までの約五メートルに幅一・二メートルのマットを敷き、その中にペレットストーブの排熱で温めた液体を循環させる。例年は一・五〜三メートル近い積雪があり、除雪は大仕事。「冬は冷蔵庫の中を歩いているよう。今年は融雪マットのある部分は雪かきしていない。凍結もしないから安心して歩ける」と、夫妻は歓迎する。
装置を開発したのは、ペレットストーブや太陽熱の機器などを手掛ける白山市の「エコライフ石川」(鹿野朋之代表)。廃棄処分や中古の家庭用ボイラーの部品を再利用し、製造のコストを抑えた。排熱を活用するためペレットボイラー代も不要。開発に関わった県内の環境団体「かがのと自然エネルギー研究会」事務局長の長田昭夫さん(73)は「排熱の活用法をもっと増やしたい。山間部を中心に普及させていけたら」と話す。
山村さん宅への設置を取り持ったのは、長田さんの知人で金沢市のNPO法人「39アース」理事長の山本久司さん(67)。数年前から新保町の住民と交流し、集落の活性化や里山の保全に取り組む。「屋根の雪下ろしを住民から頼まれることも多く、応用が進めば心強い」と期待。金沢市産ペレットやストーブの普及も進めており、エネルギーの地産地消につながることを願っている。
装置は特許出願中で、費用は融雪の範囲で異なるが、工事費を含めて三十万〜四十万円。問い合わせはエコライフ石川=電076(225)3001=へ。